朝、バスを待っている間、が気に入ってるのは想像でまわりの人たちと話をすること。
「おはようございます、コートの下に犬を抱いたおばさん」
- 「あら、おはよう! この子、うちのわんちゃん、ここではポチといっときますけど、最近すぐに風邪をひいちゃうのよ」
「ほんとにすごく冷えますね。日はだんだん長くなってきましたけど」
- 「まったくそうね。だんだんベッドから出るのがおっくうになってくるわ。うちのわんちゃん、実はわたしもポチって呼んでるんだけど、この子がいなかったら、起きあがってもいないでしょうよ」
「ぼくは寒すぎてベッドにじっとしてることさえできませんでしたよ。だから新しい毛布を買いにいこうと思って」
- 「失礼だけど、あなたとてもお疲れのようね」
「ええ、あんまり寝てないんです。すごくのどが乾いて目が覚めるんだけど、起きて水を飲むかわりに、いつももう一度眠って水を飲む夢を見るんです」
- 「まあ変わってるわね」
「そんなことってありません?」
その場にたたずんで、ぼくはひとり思いにふけっていた。おばさんとポチをじっと見ながら。「どうかしました?」おばさんが何のまえぶれもなく聞いてきた。その声は思ったとおりあったかい感じだったけど、それでもぼくはぎくっとした。「いえ、なにも」そう答えて、ぼくはあたりをうろうろしはじめた。おばさんの見る夢についてなおも思い悩みながら。だけどおばさんの答えをどうしても思いつかない。あんなふうに邪魔されるのってほんとに迷惑だ!
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